スーパーアロイ徹底ガイド:インコネル、インコロイ、ハステロイの特性から溶接まで
スーパーアロイとは?インコネル、インコロイ、ハステロイの違いと特性
スーパーアロイとは、高Ni(ニッケル)合金のことで、ニッケル含有量が多い金属の総称です。
代表的なものとして、インコネル、インコロイ、ハステロイなどが挙げられます。
これらの合金は、耐熱性、耐食性、高強度といった優れた特性を持ち、航空宇宙、化学、
原子力など、様々な分野で活用されています。
各スーパーアロイの特徴
インコネル
- 耐熱性を重視して1930年代に開発されました。
- 現在は Special Metals Corporation が商標を保有しています。(INCO社から引き継ぎ)
- 日本では 大同特殊鋼 が製造しています。
- 代表的な種類:
- インコネル600:Ni基耐熱超合金(工業炉、半導体製造設備、原子力機器などに使用)
- 溶接時の割れ感受性は低く、通常割れは発生しません。
- TIG溶接推奨溶接材料:SNi6082
- インコネル625:高強度耐食合金(海洋機器、船舶部品、熱交換器などに使用)
- 溶接時の割れ感受性は中程度で、適用実績が十分あります。
- TIG溶接推奨溶接材料:SNi6601
- インコネル690:高耐食耐熱合金(原子力機器、石油化学機器、石炭ガス化プラントなどに使用)
- 溶接には注意が必要で、割れ感受性は中程度です。
- TIG溶接推奨溶接材料:SNi6052
- インコネル718:高強度高耐熱合金(航空機部品、ガスタービン部品、極低温超伝導装置などに
使用)- 溶接性は悪く、TIG溶接の実績はありません。
- インコネル600:Ni基耐熱超合金(工業炉、半導体製造設備、原子力機器などに使用)
インコロイ
- インコネルよりも鉄をベースにしており、ステンレス鋼に近い特性を持ちます。
- INCO社 の商標です。
- 代表的な種類:
- インコロイ800:593℃以下の環境で使用
- インコロイ800H/800HT:593℃以上の高温環境で使用
- 高い温度では900℃前後で使用した例もあるようです。(講習資料より)
- インコロイ825:800シリーズにNi、Mo、Cuを添加して耐食性を向上させたもの。
Mo添加により耐食性が向上します。- 耐熱性と耐食性が要求されるプラントなどに使用されています。
ハステロイ
- 耐食性に優れ、ヘインズ社が開発しました。
- 日本では 三菱マテリアル社 が商標を使用しています。
- 代表的な種類:
- ハステロイB-2:非酸化性酸(塩酸、硫酸、酢酸、リン酸など)に強い。
石油化学関係の塔などに使用。- TIG溶接推奨溶接材料:SNi1066
- ハステロイC-276:酸化性酸、非酸化性酸など広範囲の腐食環境で使用される汎用的な
耐食合金鋼。石油化学関係の塔などに使用。- TIG溶接推奨溶接材料:SNi6276
- ハステロイC-22:C-276の改良型合金。石油化学関係の塔などに使用。
- TIG溶接推奨溶接材料:SNi6022
- ハステロイX:汎用的な耐熱合金(耐酸化性、耐浸炭性、耐窒化性、高温強度良好)。
航空機ガスタービン燃焼筒、アフターバーナーなどに使用。
- ハステロイB-2:非酸化性酸(塩酸、硫酸、酢酸、リン酸など)に強い。
スーパーオーステナイト系ステンレス鋼
SUS312L、SUS836L、N08926、N08354、N08367 などがあります。
- 耐食性に優れ、食品関係のタンクや環境設備などに使用されます。
- 特に SUS312L は、醤油タンクや塩みりんタンクなどに使われています。
- 注意点: 割れが入りやすい性質があります。
スーパーアロイの溶接
スーパーアロイは、いずれも溶接割れ感受性が高いため、溶接には細心の注意が必要です。
特に、**高温割れ(凝固割れ)**が生じやすい傾向があります。
溶接時には、適切な溶接棒(TIG溶接用)を選定し、適切な溶接条件を設定することが重要です。
まとめ
スーパーアロイは、その優れた特性から様々な分野で欠かせない材料ですが、溶接には注意が必要です。
材料の選定や溶接方法については、専門家と相談することを推奨します。
参考情報
Ni基合金の溶接上の注意点の解説サイト
https://www.weld.nipponsteel.com/techinfo/weldqa/detail.php?id=27TLT46
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