ステンレス鋼

ステンレス鋼溶接

特性として、一般的にさびにくい材料と知れ渡っています。
また耐食性、耐酸性、機械的強度などがあげられます。
耐久消費財には無くてはならない材料ですね。
用途として、食品関係の設備、食器、厨房機器、製薬、医療器具、
建築物、プラント関係使用範囲はたくさんあります。

ステンレス鋼にはSUS304と呼ばれる代表的な規格があり
ステンレス鋼中65%使用されています。
化学成分と金属組織上の分類から下記の種類があります。

マルテンサイト系ステンレス鋼
Feに約13%Crを含有させた13Crステンレス鋼
SUS403,410,410S,420J1,420J2,431,などがあります。
SUS431,440A,440B,440C 416 など機械構造用鋼と同様に
焼き入れにより硬化し高硬度、高強度の使用目的にしたもの
が多いです。また溶接性は悪いです。

フェライト系ステンレス鋼
Crを16~18%含有するSUS429,SUS430などがあります。
耐食性や、高温での耐酸化性を目的としたステンレス鋼。
建築内装用、家庭用器具、家電部品など使用されています。
溶接割れを起こす欠点があります。

オーステナイト系ステンレス鋼
18Cr8Niを含んだ代表的なSUS304があります。俗に
ステンレスと言ったらこの規格になるほど、一般的であります。
使用用途として食器、建築金物、配管など使用用途は
たくさんあります。

オーステナイト系ステンレス鋼の溶接性
炭素鋼のように比較的容易に溶接を行うことができます。
しかし溶接時に高温割れ(凝固割れ)や腐食環境によっては
粒界腐食、応力腐食割れ(SCC)などが発生します。

(1)高温割れ
オーステナイト系ステンレス鋼の溶接時に発生する割れに
多いのが高温割れ(凝固割れ)である。 原因として考えられる
のが溶接収縮歪みが発生するからである。
割れの形態として縦割れやクレータ割れなどである。
溶接金属の高温割れに及ぼす溶接金属中の(Pリン+S硫黄)量と
フェライト量のとの関係があり(P+S)量の増加とともに
高温割れ感受性は高くなるがフェライト量が多くなると
高温割れは発生しなくなる。
オーステナイト系ステンレス鋼溶接金属の凝固割れ感受性は、
フェライト量と密接な関係があるみたいです。

(2)腐食
一般的にはステンレスは腐食しにくいと認識があるみたいですが、
それには訳があるのですね。
約12%以上Crを含むステンレス鋼は腐食環境下で優れた
耐食性を示す。
これはCrが腐食環境下で酸化しさらに水と反応して緻密な
水酸基皮膜を形成することで、それ以上の腐食の進行を阻止
するためである。
この膜は不動態皮膜と呼ばれステンレス鋼の耐食性の
根元となっている。

(3)応力腐食割れ(SCC)
応力腐食割れには次の3つの条件が満たされた
場合に生じる現象である。

材料(鋭敏化、不純物等)

環境(温度、塩化物等)

応力(残留応力、外部応力等)

応力腐食割れの分別としましてはアノード溶解によって
割れが進行する活性溶解型(APC)と腐食反応に
よって生じた水素が支配要因となる水素脆化型(HE)に大別される。
なお狭義の応力腐食割れは活性溶解型のみを指す。

(4)熱影響部の鋭敏化

溶接熱影響部は1000℃以上に加熱された溶体化部と
500~850℃程度に加熱された炭化物析出部に
分けられます。炭化物析出部では、オーステナイト粒界に
Cr炭化物が析出し、粒界近傍のCr固溶濃度が低下するため、
粒界腐食をおこしやすくなる。
このようにCr炭化物が析出し、粒界腐食感受性が
増す現象を鋭敏化という。腐食環境中では、この部分に
ウエルドディケイと呼ばれる溝状腐食を生ずることがある。

鋭敏化を防止策
①溶接方法ならびに溶接条件の適正な選定により
溶接入熱を小さくするか、あるいは水冷しながら溶接し
Cr炭化物が析出しやすい鋭敏化温度域(500~850℃)
の冷却速度を速くする。

②0.03%C以下の低炭素ステンレス鋼
(SUS304L、SUS316Lなど)を使用する。

③Ti、Nbなどを添加した安定化ステンレス鋼
(SUS321、SUS347)を使用する。

④粒界析出を起こした材料は溶接後、炭化物を固溶させるため
固溶化処理(1000~1100℃加熱後急冷)を施す。

溶接分類

代表的なオーステナイト系ステンレス鋼SUS304を取り上げます。
溶接法の分類としましては、GTAW(ティグ溶接)、
GMAW(マグ溶接、ミグ溶接)ロー付け、はんだ付け、
スポット溶接、YAGレーザ溶接があります。

Tig溶接
溶接性は非常によくティグ溶接の場合精度よく高品質な接合部を
成形できるアーク溶接です。とくに溶接部の美観が必要とされる
ステンレス製品が多く、ティグ溶接なら高品質な溶接が可能です。
しかしながら欠点として溶接速度が遅く、溶け込みが浅い等の
欠点もある。当然溶接速度が遅いと溶接入熱が多くなり、溶接
変形などの問題も生じる。

裏波溶接(Tig溶接)
ティグ溶接の裏波を出す場合はアルゴンガスにてバックシールド
をしなければなりません。バックシールドを施さないと酸化に
より不完全なビートが出来ます。バックシールドガスを流すこと
によって健全なビートが形成されます。バックシールドガスの
雰囲気中の酸素濃度の影響としましては1.0%以下が良いとされて
います。酸素濃度が約2%以上になると裏波ビートが酸化により
不健全になります。1.0%以下であればレントゲンも通すことが
可能です。

薄板の歪み防止策としましては(Tig溶接場合)

・銅板等でバッキングをする
・溶接近傍を冷却する
・高速パルスを利用する
・水素含有のシールドガスを使用し溶接速度を速める

最近ではステンレス鋼の深溶け込み溶接法として2重シールド
トーチを採用して外側に特殊酸化性ガス内側に不活性ガスを
使用したAA-TIG溶接法も実用化されている。弊社としましても
非常に採用したい技術である為、溶接学会等での情報を精査中で
ある。

『参考文献』 溶接・接合技術持論 ステンレス鋼溶接トラブル事例集
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