おはようございます。溶接管理技術者の上村昌也です。
先日のセミナーで私のすごく知りたかったテーマのひとつ。
『トラブル事例から学ぶステンレス鋼溶接の勘どころ』
本来こういった事例はほとんどの企業が公開したく無いものですが
講師の川嶋巌氏は自らの失敗事例を教えてくださりました。
『裏波溶接金属の酸化による溶接欠陥事例』
配管などで裏波溶接をするのにバックシールドが必要なので
アルゴンガスのコストが高く付くのでフラックスを開発された事例です。
『亜鉛による溶接割れの発生事例』
SUS304製タンクへの亜鉛メッキボルトの溶接でタンクに亀裂が入った
事例です。この事例は直径、高さ8mにも及ぶ大型タンクが完成検査時に
クラックが見つかったという話です。
完成検査で発見したという事はすでにタンクが出来上がっているという
事ですごい損害ですよね。
さらに、別の事例では配管溶接時にジンクリッチペイントを溶接現場
近傍で塗装作業していたとこと、その粉体が溶接金属に巻き込み
溶接割れが発生したという事です。
『SUS310S溶接金属の割れ発生事例』
ステンレス鋼(SUS310S t-2mm)パイプ巻きをTIG溶接法で行なったが
溶接金属部の中央が割れた事例です。
こちらは高温割れを起こしていて、液相(低融点金属)が凝固するときに
発生した。SUS310Sでは燐化物が考えられるそうです。
補足
弊社ではSUS310Sの溶接時に用いる溶加棒はSUS310Sを使っていますが
事例集では積層溶接した場合、310Sは溶接割れの感受性が高いため次層の
熱影響により前層の溶接金属が液化割れを起こすケースがあるそうです。
よって低カーボン量の310Sよりも310の方が割れ感受性が低いため割れ
感受性の低い溶加棒の使用を推奨されています。
他にもたくさんの事例(原因と対策)を教えて頂きました。
『トラブル事例から学ぶステンレス鋼溶接の勘どころ』
こちらの参考書には事例がたっぷり掲載されていますので
一読をお勧めします。結構な値段しますが価値はあります。
コメント